健康診断で正常でも高血圧という人も… 専門医が勧める「本当の血圧」測定
スマートウオッチを活用する
「本当の血圧」を知るには健診や受診時の測定だけでは不十分。仮面高血圧は、持続性高血圧(診察時も診察外も高血圧)より脳卒中や心筋梗塞などのリスクが高いとの報告もある。正常血圧の脳心血管疾患リスクを1とすると、持続性高血圧は2.94倍、仮面高血圧は3.86倍だ。
「血圧は朝夕はもちろん、日中も測定すべき。コンビニに血圧計が設置されていれば四六時中測れていいのですが、現状はそうではない。家庭と職場に血圧計を置いて測る。スマートウオッチの機能を活用すると、もっと気軽に測定できます。日中の血圧が135/85㎜Hg以上(上、下のどちらかが超えている場合も含む)で続くようなら受診の必要があります」
スマートウオッチは多機能なウエアラブル端末で、ファーウェイやアップルなど複数のメーカー品がある。腕時計と同様に腕に装着するので、“病院では測定できない数値”もわかる。最近はスマートウオッチの記録を診察に活用する、スマートウオッチ外来を設ける病院もある。
「日常的にチェックすることの利点はいくつもあります。“本当の血圧”を知ることに加え、血圧に自然と意識が向く。仮面高血圧がわかればなんとかせねばとなるでしょうし、降圧薬を服用している人では、日常的なチェックで血圧コントロールの不良を痛感し、薬の飲み忘れが減った例も少なくありません」
ちなみに、飲み忘れた場合(朝飲む習慣なのに、昼過ぎに飲み忘れに気づいた、など)は、気づいた時点で飲んでOK。
ずっと同じ薬を飲み続けている人では、「その薬がきちんと効いているか」の確認にもなる。
「50歳前から高血圧の薬を飲んでいる場合、高齢者になると別のタイプの薬に替えた方がいいことも。また、血圧が上がりやすい冬は、従来薬では血圧が下がり切らない人もいます。薬を追加するかどうかの判断材料に日常的な血圧のチェックが非常に役立ちます」
「年を取ったら、血圧は下げすぎるとかえって有害なのでは」と思う人もいるかもしれない。かつては医師の間でもその見方があった。
しかし、現在は否定されている。
「2015年実施のアメリカの大規模臨床試験『SPRINT研究』で、収縮期血圧(上の血圧)を140未満まで下げた群より、120未満に下げた群の方が年齢に限らず、脳卒中、心筋梗塞のリスクが低かった。この研究は米国の公的機関による研究で、製薬会社が関わっていない。非常に信頼度が高い」
脳卒中、心筋梗塞は言うまでもなく命に関わる重大病だ。自分は大丈夫と過信せず、しっかり対策を講じたい。