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酒向正春ねりま健育会病院院長

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

認知機能が低下すると、どうしてゴミ屋敷になってしまうのか

公開日: 更新日:

「足の踏み場もありませんでした。どうやって暮らしていたのかわかりません……。ゴミがあふれて汚れや臭いもあり、部屋に入るためにモノを動かすのも大変でした。患者さんは本当に自宅へ帰れるのでしょうか?」

 入院中の軽度認知症患者さんの家庭訪問に行ったセラピストが言いました。

 一方、患者さんは「もともと自宅では普通に暮らしてましたよ。掃除もしてるし、特に困ることはないですよ。家に帰ったら、大丈夫です。ちゃんとやれます。家の掃除も、帰ったらゆっくりやっていきます」と答えられました。

 同じ現場を目にしている2人の感想が、セラピストと患者さんでこれほど違います。自分の「家」や「部屋」という空間は、患者さんのすべてを包み込んで守ってくれるのだと思います。患者さんは、ゴミが散乱した家の中の状態を問題とは感じておられず、むしろ安心感があるようです。

 今後、自宅退院されても掃除はあまりされないでしょう。業者に頼んで一度きれいに掃除、廃棄、整理整頓してもらっても、誰かの継続的な支援がないと同じ状態に戻るのは時間の問題です。このため、患者さんと一緒に掃除や整理整頓を協力してもらえる介護サービスを整えてから、独居自宅退院していただきました。それにしても、なぜ「ゴミ屋敷」になるのでしょうか。

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