長寿研究のいまを知る(14)老化は「44歳」と「60歳」で加速する
この研究によって、老化の分子マーカーにおいて一貫した非線形のパターンが発見された。
具体的には、年齢が44歳と60歳前後に達した時点で、特定の分子や機能経路の異常が顕著に見られることがわかった。たとえば、免疫調節や炭水化物代謝に関する経路が60歳ごろで変化し、40歳ごろには心血管疾患や脂質代謝、アルコール代謝に関連する経路の変化が確認されたのだ。こうした分子レベルでの変化は、老化に伴う疾患リスクの増加と関係していると考えられている。
「スタンフォード大学のこの研究は、老化が年齢に比例して進むわけではなく、特定の年齢でリスクが増大することを示しており、従来の『仮説駆動型研究』に対する新たな手法として注目されています。日本では従来、仮説に基づいて特定の分子や遺伝子を詳しく追跡し、ノックアウトマウス(遺伝子操作により特定の遺伝子を欠損させたマウス)の表現型を調査する研究が中心でした。その成果は国際的な論文として評価されてきましたが、現在の世界的なトレンドは新たなものになってきています」
■世界中で注目されるマルチオミクス解析