(2)糖尿病患者の白内障手術はなぜ難しいのか
■他の目の合併症を悪化させるケースも
白内障の治療は最終的に手術で行う。嚢を小さく切って濁った水晶体を取り除き、代わりに人工の水晶体(眼内レンズ)を挿入する。年間140万件の白内障手術が行われており安全性は高い。後嚢下白内障手術も他の白内障タイプの手術と比べてとくに難度が高いわけではない。しかし、糖尿病患者の場合、手術に特有のリスクが伴うことを知っておきたい。
「糖尿病は血管や神経に損傷を与えるため、白内障に限らず手術中に出血が増える可能性があります。糖尿病による視神経の損傷や網膜の問題があると、視力の回復が難しくなる。さらに糖尿病患者は感染症にかかりやすく手術後合併症を発症するリスクが高くなることが指摘されています。このため、糖尿病の人が白内障手術をする前には血糖コントロールを改善することが求められます」
糖尿病患者が抱えるリスクはこれだけではない。糖尿病が原因で引き起こしやすい目の合併症は白内障以外に、糖尿病網膜症、ブドウ膜炎、視神経萎縮、血管新生緑内障、外眼筋麻痺などがある。白内障手術は、これらの目の合併症を悪化させる可能性もあるので注意が必要だ。