(2)糖尿病患者の白内障手術はなぜ難しいのか
「白内障は3つのタイプがあります。水晶体の中心の核が濁る核白内障、核の周辺の皮質が濁る皮質白内障、水晶体を包む袋(嚢)の後ろ側がすりガラス状に濁る後嚢下白内障です。加齢による白内障は核白内障や皮質白内障が多い一方、糖尿病患者では後嚢下白内障や皮質白内障が多いとされています」
注意したいのは、後嚢下白内障の方が濁りのスピードが速くなること。1.0だった矯正視力が3カ月ほどで0.3以下になることも珍しくないという。
なぜ糖尿病の人は後嚢下白内障になりやすいのか?
「糖尿病で後嚢下に混濁が起きる原因は、水晶体の赤道部(水晶体は円盤状の形をしていて円盤のへりの部分)にある細胞が異常に増殖して後嚢下に移動し、透明性を失うことにあります。糖尿病では血糖値が高いため、水晶体内にソルビトール(糖アルコールの一種)が蓄積し、細胞や線維が傷つきやすくなります。また、高血糖による酸化ストレスが細胞にダメージを与え、混濁を引き起こします。後嚢下は光を通す上で重要な部位であり、この部分に異常が起きると視力低下やまぶしさ(グレア)が目立ちやすくなります」