(16)ヒトゲノムの43%を占める「動く遺伝子」と老化との関係
地球は10万年~2万年のスケールで氷期と間氷期を繰り返している。ヒトはそうした大きな環境変化に順応しながら命を永らえてきたが、なぜそのようなことができたのか?
その理由のひとつとして「動く遺伝子(転移遺伝子)」の存在があるからと言われている。
動く遺伝子とはかつてはジャンク遺伝子と呼ばれ、ゴミのような扱いを受けてきた遺伝子のこと。その後の研究で、ダイナミックな環境の変化に順応するため、遺伝子の一角の塩基配列を丸ごと変え、ゲノム構造を変化させることがわかった。それはまるで遺伝子が動いているかのように見えることから「トランスポゾン」と呼ばれている。
ちなみにヒトの遺伝子は、DNAが全体の2%程度で、動く遺伝子が43%。残りはその残骸、未解明なものと言われている。
トランスポゾンの話を進めるにあたって、改めてゲノム、染色体、遺伝子、DNAの関係についておさらいをしておきたい。
そもそもヒトはおよそ60兆個(37兆個との説もある)の細胞でできている。細胞ひとつひとつには細胞核があり、その中に遺伝情報が刻まれたDNA(デオキシリボ核酸)が入っている。DNAは2重らせん構造をしたひも状の物質で、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4種類の塩基が並んでいる。ヒトは細胞内に60億塩基対のDNAを持っているが、この塩基の並び方の一部でも変わると病気になることがある。