著者のコラム一覧
沢野ひとしイラストレーター・エッセイスト・絵本作家

イラストレーター、エッセイスト、絵本作家。1944年、愛知県生まれ。児童書出版社勤務を経て、書評誌「本の雑誌」創刊時の76年から表紙と本文イラストを担当。第22回講談社出版文化賞さしえ賞受賞。著書に「ジジイの片づけ」「人生のことはすべて山に学んだ」ほか多数。

生きることは旅すること 美空ひばり「川の流れのように」を聞くと病床の母を思い出す

公開日: 更新日:

 昭和の時代が終わったのは昭和63年、1988年のことである。翌年は平成元年でその年の6月に美空ひばりが亡くなった。52歳という若さでこの世を去った。「昭和の歌姫」という番組が多く組まれた。

 ちょうど私が45歳の頃で会社勤めからフリーの仕事につき5年目であった。バブル経済の勢いがまだ残っていた時期で、出版社やPR雑誌からの仕事がいくらでもあり、毎夜のように浮かれ、フラフラと深夜まで飲んだくれていた。

 その頃、町田の郊外に小さな家を建てた。妻と2人の子は、近くの多摩丘陵の野原を走り回っていた。

 ある休日の夕方に、家族が買い物に出掛けていたので、ビールを飲みながら、ぼんやりテレビを見ていたら、美空ひばりの死去の特集をしていた。

 それまでほとんど歌謡曲番組は見たこともなかった。画面には淡い緑色のドレスをまとった美空ひばりが、なんだか寂しそうな笑みを浮かべ、あの「川の流れのように」を低く流れるように歌いだした。そしてサビで「あ~あ~」ときたときに不意に涙が湧いてきた。そしてまたリフレインする「川の流れのように」で、なんと号泣してしまった。

 私の母は美空ひばりより1歳上の53歳で亡くなった。私が19歳のときに長いがんの闘病生活を送り、寒い2月に息を引き取った。

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    大阪万博「午後11時閉場」検討のトンデモ策に現場職員から悲鳴…終電なくなり長時間労働の恐れも

  4. 4

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 5

    遠山景織子の結婚で思い出される“息子の父”山本淳一の存在 アイドルに未練タラタラも、哀しすぎる現在地

  1. 6

    桜井ユキ「しあわせは食べて寝て待て」《麦巻さん》《鈴さん》に次ぐ愛されキャラは44歳朝ドラ女優の《青葉さん》

  2. 7

    江藤拓“年貢大臣”の永田町の評判はパワハラ気質の「困った人」…農水官僚に「このバカヤロー」と八つ当たり

  3. 8

    天皇一家の生活費360万円を窃盗! 懲戒免職された25歳の侍従職は何者なのか

  4. 9

    西内まりや→引退、永野芽郁→映画公開…「ニコラ」出身女優2人についた“不条理な格差”

  5. 10

    遅すぎた江藤拓農相の“更迭”…噴飯言い訳に地元・宮崎もカンカン! 後任は小泉進次郎氏を起用ヘ