本当に救急車を呼ぶべき心臓と脳の症状とは…三重県松阪市は一部有料化で7700円を徴収へ
救急車で搬送された方が入院せずに済んだら、7700円を頂きます──。三重県松阪市は、救急搬送の有料化方針を打ち出した。重病ではない人が通院の足代わりに救急車を利用するようなケースは各地で指摘されているから、救急車の有料化が今後、相次ぐ可能性は十分だろう。では、本当に救急搬送が必要な症状とは……?
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松阪市が打ち出した救急搬送の一部有料化は、入院や手術が必要な患者を24時間体制で受け入れる2次救急医療機関で、松阪中央総合病院、松阪市民病院、済生会松阪総合病院の3つだ。
松阪市では、救急車の出動件数が急増し、医師や看護師など救急医療を支える負担は限界で、助けられる命を助けられなくなる恐れもあることから、救急搬送された人のうち、入院せずに済んだ人には7700円を徴収するという。
この料金の名目は救急搬送料や利用料ではなくて、選定療養費だ。総合病院をはじめ大規模病院では、紹介状のない人が外来を受診すると、診察料のほかに7000円以上(歯科は5000円以上)の初診料がかかる。軽症者をクリニックに振り向ける流れの一環で、松阪市が徴収する料金も選定療養費だ。今後、周知期間を設け、6月1日からスタートする。
ただし、紹介状がある人や救急対応した医師が必要と認めたケースなどは対象外で、7700円は徴収されない。
救急車の一部有料化を受けて、「7000円は高い。せいぜい2000~3000円なら」「救急車を私物化してタクシー代わりに使う人もいるから仕方ない」など、ネット上には賛否両論が沸き起こっている。
■全国で搬送された5割は軽症だった
しかし、この流れは各地の自治体で相次ぐだろう。消防庁は全国の救急搬送などの実施状況を「救急・救助の現況」にまとめていて、昨年1月に公表された2022年版によると、21年に救急出動した件数は前年比4.4%増の約620万件。そのうち外来治療で済む軽症は約45%だった。軽症者は減少傾向ながら、4~5割は救急治療を必要としない人が占めている。
この傾向は当然、松阪市も同じだ。2年前に前述の3つの総合病院を調べたところ、入院に至ったのは、平日昼間の救急搬送のうち約51%。休日の夜間ではもっと低く、約37%だ。平日夜間の場合、軽症者は6割を超える。悪いことに昨年の救急出動件数は、過去最多の1万6180件。20年前の2倍超だ。
タクシー代わりに救急車を利用する不届き者がこれほど多くては、救急車の一部有料化もやむなしだが、医学知識のない一般の人にとって、そのときの症状が救急搬送を必要とするものかどうかは判断が難しい。どんなふうに考えればいいのだろうか。
「私は狭心症を3回、経験していましてね。そのどれもが、『すぐに救急搬送してもらわないと助からないな』というものでした。それまでの胸の痛みとは、明らかに違っていたのです」
こう言うのは、医師で医療ジャーナリストの富家孝氏だ。救急搬送が必要な症状とそうでない症状の違いは何か。富家氏に詳しく聞いた。
「私はかつて新日本プロレスのリングドクターをしていたため、レスラーと食事をしながら酒を飲むこともあって、胃酸の逆流で胸焼けを起こすことがしばしばでした。胸焼けの“震源地”はみぞおちの上あたりですから心臓に近い。でも、胃酸の逆流による場合は、吐き気やゲップなども併発しやすいのに、狭心症の1回目のときは吐き気やゲップはなく、冷や汗を伴って胸が締めつけられるような強烈な痛みでした。いつもと異なる痛みの発現だったことが、胃酸の逆流を除外して心臓の異常を疑う決め手ですね」