鳥山明氏の命奪った「急性硬膜下血腫」…血液サラサラ薬服用者は、ちょっとしたケガでも発症リスクが
生活シーンのありふれた頭部の外傷
ここまでの急性硬膜下血腫は、強い衝撃による典型的な流れだったが、実は強い衝撃でなくても発症する。しかも、「その方がもっと危ない」というから怖い。怖さのベースにあるのが、いわゆる血液をサラサラにする薬で、血液を固まりにくくする薬だという。
「不整脈のひとつ心房細動や心筋梗塞、脳梗塞、狭心症などがある方は、抗凝固薬や抗血小板薬といった血液を固まりにくくする薬が処方されます。そういう方は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病や加齢の影響が強く、動脈硬化が進んでいて、血管が切れやすいのです。それで、万が一、血管が切れると、薬の影響で出血が止まらず、血腫ができる。それが脳で生じると、硬膜下血腫になります。で、こういうタイプは、血管が切れやすいので、強い衝撃でなくても硬膜下血腫を起こしやすいのです」
「日本外傷データバンク2022」によると、外傷で救急診療を受けた8万8817人のうち、頭部外傷は2万9311人で33%。外傷の中で頭部は下肢に次ぐ。では、強い衝撃ではないほどの強さとは、どれくらいなのか。
「たとえば、開いている扉に気づかず頭をぶつけたり、座って居眠りしているときにうつらうつらして壁にドンと頭を打ったりするケースです。血管がモロくなっていると、生活の中でのちょっとした衝突や転倒でも脳の血管が切れて、急性硬膜下血腫を起こすリスクがゼロではありません。そういう場合、衝突直後の患部の痛みはあっても、意識障害はないことがほとんどで、1週間くらいして“ふらふらする”“何となく気分が悪い”などの症状が現れます。血腫による症状が現れたら、事故直後の発症と同様にすぐに治療しないと危ない。迷わず救急車を呼んでください」