熊本県知事の「一般事務とかいらない」が物議…失言する人の思考パターンを精神科医が分析

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フワちゃん大炎上、代償はSNSの方が重い

 事態の沈静化を図る木村知事に対して、ネット上での失言で絶体絶命のピンチに陥ったのがフワちゃん(30)だ。芸人のやす子(25)が今月2日に「やす子オリンピック 生きてるだけで偉いので皆 優勝でーす」とXに投稿したところ、4日に「おまえは偉くないので、死んでくださーい 予選敗退でーす」と引用リポストしてかみついた。

 その不適切投稿が原因でフワちゃんは、自らの名前を冠したラジオ番組が放送休止になり、CM動画も公開停止に。謝罪を繰り返しても、騒動は収まらず、芸能活動を再開できそうな気配はまったくない。ITジャーナリストの井上トシユキ氏は2人の失言の違いに触れた上でこう言う。

「木村知事の失言は、全体の文脈をよく読めば言葉足らずが原因で、説明不足の部分をきちんと丁寧に補えば理解できないことはないでしょう。しかし、フワちゃんの投稿は木村知事の“失言”と比べると、明らかに陰湿で生死に触れているのがよくありませんでした。そんな失言内容の“質”もさることながら、問題が発生した場所もそれぞれの騒動に影響しています。木村知事は会議における会話でしたが、フワちゃんは不特定多数が存在するネット上のSNS。ネット上での失言はデジタルタトゥーとして残り続けるので、“人のうわさも七十五日”では済まず、影響が大きい。一般の方も人ごとではありません」

 政治家は本来、言葉を大事にする仕事のはずだが、日本にはその意識に欠ける人が目立つ。たとえば静岡県の前知事・川勝平太氏(76)は、4期15年の任期中、「静岡市は政令市の失敗事例」「あちら(御殿場市)はコシヒカリしかない。ただメシだけ食って、それで農業だと思っている」「磐田は文化が高い。浜松より元々、高かった」などと失言を繰り返した挙げ句、今年4月1日の新人職員への訓示でもやらかして辞職に追い込まれている。

「県庁というのは別の言葉でいうとシンクタンクです。毎日野菜を売ったり、牛の世話をしたり、物を作ったりとかと違って、基本的に皆さんは頭脳、知性の高い方たちです」

“職業差別発言”ととらえられても不思議ない内容だったから、さすがに辞職やむなしだった。

 永田町に目を向けても自民党麻生太郎副総裁(83)は舌禍問題を繰り返している。今年1月には、上川陽子外相を話題に「このおばさん、やるねぇ」「そんなに美しい方とは言わんけれども」と差別的な発言で大炎上した。永田町の失言議員が麻生氏に限らないのは、ご存じの通りだ。

■適度な自己評価はよし、高過ぎは不寛容に

 常識があればリアルな世界でもネット上でも、これらの発言がマズイのは分かるはず。それでも毎年のように失言が問題になるのは、うっかりなのか、それともわきの甘さを持ち合わせた人に共通することなのか。

 精神科医で明陵クリニック院長の吉竹弘行氏は「ある種の考え方を持つ人が、ブレーキが外れやすい状況に直面すると、失言しやすいのだと思います」としてこう言う。

「ひとつは、自己評価や自己肯定感の高い人です。たとえば、熊本の木村知事は左手首から先を失うハンディを負いながら男子校御三家のひとつ私立武蔵中高から1浪の末に東大法学部に進学。卒業後に自治省(現・総務省)に入省したエリートです。中学から常に“デキる集団”にいるのですから、『頑張った』という思いは少なからずあるでしょう。逆に言うと、庶民の感覚を知らずに育ったとも言えます。一般に自己評価や自己肯定感が適度な人は、周りにおおらかで寛容になるのですが、それが強過ぎると自分本位で周りに不寛容になりがち。特に出世直後は、自己評価や自己肯定感が高まるので、自信がある人ほど失言を起こしやすいのです」

 木村氏の知事就任は今年4月。蒲島郁夫前知事の任期満了に伴う選挙戦を勝ち抜いてのものだ。その蒲島氏は東大時代の指導教官。師匠からバトンを引き継いで県政トップに立った喜びはひとしおだっただろうが、そんなときほどボロを出しやすいという。

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