シーシャバーで被害続々…厄介な「一酸化炭素中毒」飲食店・自宅・クルマでの注意点
シーシャをご存じだろうか。中東で生まれたとされる水たばこで、インドや中国、東南アジアなどにも普及。いまでは都市部を中心に日本でもシーシャバーが増えている。そんな店で一酸化炭素中毒が相次いでいるという。実は、このガスはちょっとしたことで身の回りで発生しやすいから要注意だ。
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東京消防庁と日赤医療センターの研究チームは、同庁第3消防方面本部の救急活動記録を分析。この本部が管轄する渋谷や下北沢などは若者に人気のエリアで、シーシャバーが点在する。その活動記録を調べると、2018年1月から23年6月までにシーシャと関係する一酸化炭素(CO)中毒が64件起きていた。ほぼ月1件のペースだ。
そのうち救急搬送されたのは41件。20代が8割以上で、男女別では女性が56%と男性を上回っていた。多くは客で、従業員もいたという。
重症度別では重症者もいたものの、軽症が多かった。室内が高濃度に汚染されて複数の人が同時に倒れるようなケースはなかったそうだ。
水たばこは、火皿の上で香料などを混ぜたタバコ葉を炭で熱し、発生した煙を水にくぐらせてパイプで吸う。炭での加熱が紙たばこより多くのCOを発生させやすく、世界保健機関によると、世界では水たばこの急性CO中毒があちこちで報告されているという。
「ガスや炭などの熱源が燃えるには十分な酸素が必要ですが、酸素不足で燃えると不完全燃焼を起こして、一酸化炭素が発生しやすいのです。一酸化炭素は無色・無臭。発生しても気づきにくく、毒性がとても強いため、少量でも吸い込むと危険です」
こう言うのは、医師でジャーナリストの富家孝氏だ。COの濃度と吸入時間によって、どんな症状が現れるのか。
その関係をまとめたのが〈表〉だ。
濃度0.02%のCOを2~3時間吸い込むと、軽い頭痛が発症。その4倍の濃度だと、わずか45分で頭痛やめまいに加え、吐き気を催し、2時間で気を失う。濃度が濃くなるほど頭痛やめまいを起こすまでの時間は劇的に短くなっていって、濃度1.28%だとわずか1~3分で命を落とすというから怖い。富家氏が続ける。
「一酸化炭素は、酸素の運び役であるヘモグロビンとの親和性が強く、酸素の200倍といわれています。万が一、一酸化炭素に汚染された空気を知らず知らずのうちに吸い込むと、肺でヘモグロビンの多くが一酸化炭素と結合し、酸素と結合できません。その結果、脳をはじめ体の細胞に酸素が届かず、内部窒息と呼ばれる状態となり、命が奪われるリスクが高まるのです」