ネコちゃんの口が臭い! 考えられる「3つの原因」とは
今回のネコちゃんはこれらに該当しませんでした。空腹時に発生する酸味のある臭いで、胃を触診するとまさに空っぽ。飼い主さんはこの臭いを時々、感じるのだと思います。精密検査も必要ありません。
われわれ獣医師にとって臭いの評価はとても重要です。たとえば、外耳炎で採取した耳あかの臭いを評価すれば、原因となる細菌や真菌の目安になるため、外用薬のチョイスに役立ちます。さらに顕微鏡検査を行えば、菌の形状や特徴なども把握できるので、より治療の参考になります。
下痢のときも同様で、消化されていないものの臭いと菌の形状が分かれば、どんな治療が効果的なのかの目安に。特に細菌性腸炎では、抗生物質を選ぶ手助けになるのです。
細菌や真菌などはそれぞれ独特の臭いがあり、分泌物や粘液なども独特ですから、臨床経験を重ねながらその特徴を頭に入れておけば、飼い主さんにとっては治療がスムーズになるメリットがあります。
今回のネコちゃんでいえば、検査するとなると血液検査やX線検査も必要で、場合によっては血中の消化酵素を調べるためすい臓機能検査もプラスすることになります。そうなると、時間も費用もかかりますが、分かるのは胃酸過多や胃もたれ程度です。飼い主さんにとっての費用対効果はどうなのでしょうか。
確かに抗生物質が効かない耐性菌の問題もあって、きちんと検査した上で抗生物質を選択することは重要ですが、町医者のかかりつけ獣医師までもがスタンダード化することはよいと思えませんから。
(カーター動物病院・片岡重明院長)