東証改革で市場激変! グロース市場上場維持リスク…約170社こそ「買い」
M&Aは増えていく
上場廃止をにらみ、グロース市場ではM&A(買収合併)が積極化している。
「海外では成長の打ち手としてM&Aが長らく行われてきました。Googleによるユーチューブ、フェイスブック(現メタ)によるインスタグラムなどが典型例です。日本も成長の手段として時間やアセット(資産)を買うM&Aは一般的になりつつあります」
M&Aが成功した企業は成長して時価総額も上がる。最近では上場ベンチャー自身が買収され、上場廃止となる事例も出てきている。この場合、投資家は買収時に保有株にプレミアムをのせて買い取ってもらえる点は注目だ。
嶺井氏によると、うまくいくM&Aとは、「高値づかみをしない=買ったあとに減損しない」「アセットを生かせること」。グロース・キャピタル社が支援するIT系の会社のM&Aで言えば、テーマは主に2つだ。
一つはプロダクトラインアップを増やすこと。たとえばセールステック業界でダイレクトメールを送る会社が、テレホンアポイントメントを行うサービスを提供する会社を買収した事例。
もう一つは顧客基盤の買収。好例がラクスルで、Eコマースの印刷会社の同社は、23年9月「ハンコヤドットコム」で知られるAmidAホールディングスをTOB(株式公開買い付け)で買収した。
「ペーパーレス化が進む中、ハンコを扱うAmidAの株式時価総額は10年経過後に達成が求められる維持基準以下の20億円でした。一方で、毎年新設法人約10万社の10%がAmidAで実印や銀行印を作っており、利益は出ていた。印鑑を作れば名刺や封筒も作ります。そこでラクスルは友好的に話し合いを進め、何十億円もの広告費をかけることなく顧客基盤を獲得したのです」
この他にもアドテックのフリークアウトとユーチューバー事務所のUUUM(上場は維持)のM&Aなども23年に実現。これも両社の相乗効果を期待できるという。