小川監督率いるヤクルトで高卒2年目の村上が開花する必然
私が中日の投手コーチに復帰した2012年、最もやりにくかった敵将がヤクルトの小川淳司監督(61)だった。
とにかく我慢強い。ヤクルトの先発投手が試合序盤に失点を重ね、「向こうにはきつい展開になったなあ」と思って、相手ベンチを見やると、小川監督は表情ひとつ変えず、腕組みをしたまま身じろぎもしない。平気な顔をして、打たれた投手を五回まで投げさせることが何度もあった。劣勢になった試合で、感情に任せて次から次に投手を代えれば、ロクなことにならないことが分かっているからだ。
先を見据えて、辛抱のできる監督が率いるチームは強い。選手も育つ。私が以前から小川監督を評価する理由のひとつがそこにある。
そんな彼がヤクルト監督に復帰して2年目を迎える今季、相変わらずいい仕事をしている。例えば、高卒2年目の村上宗隆(19)の使い方だ。9日現在、リーグ2位タイの26打点、同4位タイの9本塁打をマーク。早くもその才能を開花させているが、実際にはまだまだ粗っぽいところがある。
打率・248、得点圏打率・242、三振数はリーグワースト3位タイの36だ。課題の守備でも一塁と三塁で計6失策。9号2ランを放った6日の阪神戦では、失点につながるトンネルエラーを犯して「投手に申し訳ない」と猛省していた。だが、試合後の小川監督は「あそこの球を本塁打にするのは、素晴らしい」と守備のミスより、逆方向の左翼スタンド中段まで飛ばした一発を手放しで褒めているのだ。