今年のドラフトは“戦略ダダ漏れ”「個室指名」の意外な盲点
「今年は各球団とも落ち着いて指名に集中できるのではないか」
かつてヤクルトの取締役編成部長として数多くのドラフトに携わった片岡宏雄氏がこう言った。
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26日のドラフト会議はコロナ禍の影響により、例
年とは異なる形式で行われる。12球団の代表者が一堂に会するメイン会場はなし。12球団それぞれに用意された個室からオンラインによって指名、1位入札が競合した場合は抽選ルームでクジを引く。会議自体も無観客になる。
■下の名前がチラッと
片岡氏は「指名に集中できる」根拠についてこんなエピソードを明かしてくれた。
「会議中、ヤクルトの次の指名順位の球団のテーブルから、こちらが指名を検討している選手の下の名前がチラッと聞こえたのです。よくよく聞いてみて、その選手のことだと確信した。ウチより先に指名されてはいけないので、順位をひとつ繰り上げて指名したことがあります。こういったケースはしょっちゅうあるわけではありませんけど、個室なら駆け引きをせずに済みますから」
12球団がメイン会場にいれば、隣のテーブルとの距離は近いし会話や打ち合わせは最小限、しかも小声で行わなければならなかった。が、個室なら周囲を気にせず、大っぴらに議論することもできるようになるというのだ。
「メイン会場に加え、個室に入る6人からの情報漏れも防げる。球団幹部同士、気心の知れた人たちもいますからね。他球団の幹部から控室に連れ込まれて外れ1位はだれかと問い詰められた編成責任者がいれば、ホテル内の喫茶室でGM同士が情報交換したこともあった。けれども、コロナ禍で個室への出入りはかなり厳重に管理されるだけに、幹部同士の行き来はしづらくなります」とは放送関係者だ。
■スカウト同士が行き来
一方で、用意された個室に入る6人以外のスカウトたちの管理は緩くなる。これまでは報道陣もウロウロできる各球団の控室に閉じ込められていた。スカウト同士がコソコソやりづらい環境だった。
今年は控室こそ用意されているものの、報道陣は会場のホテルには入れない。
そうなるとスカウト同士は自由に行き来できるし、直接会って話を聞くこともできる。電話やメールでの情報交換はもちろん可能だ。
「昨年までメイン会場の幹部は会議中、控室で待機するスカウトたちからメールで情報を吸い上げていた。指名予定の選手が先に他球団から指名されることはないか、指名順位をひとつ下げても取れそうかといったことに関してです。そういった情報が幹部に届く以前に他球団に筒抜けになる可能性があるのです」とは在阪球団の編成担当者だ。