ロッテ佐々木朗希 “6割の力”で153kmを投げた現状と青写真

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 160キロを期待したファンは、物足りなかったかもしれない。

 12日の中日戦で六回の1イニングに登板、3者凡退に打ち取ったロッテの2年目右腕・佐々木朗希(19)のことだ。

 京田、阿部、ビシエドの上位打線3人に対して計12球を投げ、一ゴロ、遊ゴロ、見逃し三振。変化球はスライダーの1球のみで、あとはすべてストレート。プロ初実戦の最速は153キロだった。

 それでも打ち取られた中日サイドは佐々木朗をベタボメ。「テレビで見て知ってたけど、素晴らしいものを持っている。敵ながら今後の活躍を応援したい」と見逃し三振に倒れたビシエドがエールを送れば、京田は「立ち姿に華があって、いい投手だと思う」。遊ゴロに倒れた阿部は「ストレートは速い」と言った。阿部に対する球速は149~151キロだが、それでも「速い」と感じたのは球速以上に手元で球が伸びていたからだろう。与田監督に至っては「これから球界を背負っていく投手になる」と、今後に太鼓判を押したほどだ。

「佐々木は今回、6割程度の力で投げた。それでも球速は153キロをマークして、制球も乱れなかった。それを考えれば十分、合格点をやれる内容だった」と、ロッテOBがこう言った。

「6割でも、150キロのキレのあるストレートを投げられる。ポイントは6割のストレートを、ある程度、コントロールできるか、初の実戦で四球を連発したりしないかだった。プロの投手でも腹八分目で投げられなかったり、投げられても制球が定まらないのがいますから。けれども、佐々木は問題なかった。阿部に対してフルカウントまでいっても、最後はストライクゾーンに投げて抑えた。首脳陣はもし炎上した場合、本人のダメージを最小限にとどめるために回の途中でつぎ込むリリーフまで用意したと聞きましたが、その心配も杞憂でしたからね」

 佐々木朗は高校時代に163キロをマーク。昨年5月下旬のシート打撃でも160キロを投げた。その気になれば球速はもっと出るはずだが、今年はフリー打撃でもシート打撃でも149~153キロ程度。この日も最速は153キロだった。「6割程度」で投げているのはなぜか。前出のOBの話。

「まだ、160キロに耐えられる体が出来上がっていないからです。昨年のシート打撃で160キロを投げた後、ほぼ1カ月間はほとんど投げることができなかった。おそらく肩や肘に張りが出たのでしょう。その後も実戦が近づくと、体に異変を感じるのか、自らブレーキを踏んでいました。160キロを投げようと思えば投げられるけど、自分の体が球速に耐えられないということを昨年、嫌というほど実感した。なので、あえて球速を抑えているのです。首脳陣も160キロは必要ないと考えているようですし、150キロでも十分、抑えられることが分かったのは大きな収穫だと思いますね」

■元に戻った投球フォームも収穫

 この日の「収穫」はもうひとつある。「佐々木の投球フォームですよ」と、さる放送関係者がこう続ける。

「佐々木はオフの間、投球フォームを変えた。防御率や奪三振のタイトルを獲得したオリックス山本由伸を意識して、やり投げのようなフォームを実践しようとした。石垣島に先乗りしていた佐々木の投球フォームを見たスカウトは、あまりの変わりように腰を抜かすくらい仰天したと聞きました。手足の長くない山本だから合う投げ方だけに、手足の長い佐々木が同じフォームでどうかとスカウトもクビをひねっていましたが、案の定、あの投げ方では思うようにコントロールが定まらない。本人も自覚したのか、フリー打撃、シート打撃、そしてこの日の初実戦と、段階を経るたびに元のフォームに近づいています。心配したスカウトは胸をなでおろしていると思いますよ」

 試合後の井口監督はこの日の佐々木朗についてこう言った。

「堂々と投げていた印象ですね。コントロールを意識しながら投げていたし、ストライクゾーンで勝負できていた。ちょっとピュッと投げたら153キロですから、(スピードは)まだまだ出ると思います」

 そして次回登板について「もう1回、チャンスがあるかなと。一軍で投げられればと思う」と話した。登板後に肩肘の異常が出ないようなら、開幕前のオープン戦で投げさせたいということだ。

バリバリ投げられるのは来年の夏

 ならば、その後の青写真はどうなっているのか。

「佐々木は体が大人へと変化している最中。それだけに育成には慎重にならざるを得ないのでしょう。なので、あと1回、一軍のオープン戦で投げたら、その後はおそらくファームで登板を重ねることになります。この日は1イニングだが、問題が生じなければ2、3イニングを何回か続けて投げ、耐久性をつけていく。一定の間隔で3回をしっかり放れるようになったら、一軍に昇格させることになるかもしれません。あくまでも体と相談しながら。体を強化しながら、徐々に長いイニングをこなせるようにしていくのでしょう。そうやって体を鍛えて先発としてローテーションに入ってバリバリ投げられるようになるのは、来年の夏ぐらいじゃないでしょうか」とは、前出のOB。

 160キロ右腕と騒いだところで、しょせんは高卒2年目の選手。160キロに耐えうる体を手に入れるには時間がかかるのだ。

「それに佐々木は筋力トレーニングに、さほど積極的ではないと聞きました。バランス系のトレーニングには力を入れているのですが、どうやら筋肉をつけることをためらっているフシがある。下半身だけでもしっかりとウエートをやれば、いま以上に強い体が手に入ると思いますけどね」(前出のOB)

 いずれにせよ、6割の力で153キロを投げるのだから並の投手じゃないし、将来が楽しみなのは間違いない。

 試合後の本人は、「マウンドに立つまでは緊張したが、立ってからは集中して投げることができた。球威もあったし、しっかりコントロールできた。球速で野球をやるわけじゃない。スピードが出たイコールハッピーではないし、打者を抑えるボールを投げられたのが良かった。初登板は力みがちだと思うが、フォームやタイミング、バランスが崩れないように意識した」と話した。

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