大谷翔平「2番・投手」で実現も リアル二刀流に3つの疑問

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 エンゼルスの大谷翔平(26)が4日(日本時間5日)、本拠地のホワイトソックス戦に「2番・投手」でスタメン出場した。球団史上初めて、DHを解除した試合で、4回3分の2を2安打3失点の7奪三振。打者としては3打数1安打1打点だった。

 大谷は一回、相手先発右腕シースの156キロの直球を捉え、飛距離約138メートルの特大弾を放った。エ軍投手では1972年のクライド・ライト以来の歴史的な一発で自らを援護したが、投球はピリッとしなかった。

 直球こそ最速162キロをマークするなど100マイル(160キロ)超えを何度も記録したが、変化球の制球に苦しんだ。2つの四球で招いた四回のピンチは切り抜けた。が、五回2死から三塁から暴投で1点を失うと、2番イートンから二者連続の四球。一、二塁のピンチで4番モンカダに振り逃げを許して送球が逸れる間に2点を追加された。しかも大谷は本塁ベースカバーに入った際、走者アブレイユにスライディングされて転倒。左足を引きずりながら、ベンチに下がり降板した。18年5月20日のレイズ戦以来、1050日ぶりの勝利はならなかった。試合はエンゼルスが7対4で勝利した。

【1】二刀流なのに2年9億円の年俸は安すぎないか?

「リアル二刀流」はオープン戦で2度、テストしている。1度目は3月21日のパドレス戦(1番・投手)、2度目は同29日のドジャース戦(2番・投手)だ。

 大谷の起用法は、回を重ねるごとにシビアになってきた。1度目の登板日前後はこれまで通り欠場したものの、2度目のドジャース戦の翌日には2番・DHで出場。登板翌日の打者出場は昨年1度あっただけ。そして今回の登板前日だった3日のホワイトソックス戦は2番・DHでフル出場。五回に安打で出塁した後に盗塁まで決めた。大谷が登板前日にスタメン出場したのは、日本ハム時代を通じて初めてだ。

 昨年までは基本的に登板日とその前後、つまり登板日も含めて3日間は打者として出場することはなかった。それが登板日に加え、前後の調整日までなくなると、先発と野手、完全に2人分の仕事をこなすことになる。

 メジャー4年目で調停の権利を得た大谷の年俸は、今季300万ドル、来季550万ドルと2年で計850万ドル(約9億3500万円)、平均すれば4億6750万円だ。昨年のメジャーの平均年俸が約4億7120万円だったから、大谷は平均以下。2人分の仕事をするようになることを考えれば、いくらなんでも安過ぎるだろう。

エンゼルス低迷は「打高投低」にあり

【2】マドン監督はなぜ「打って投げて」にこだわるのか

 エンゼルスは地区優勝した2014年を最後に6年連続でポストシーズン進出を逃している。「打高投低」が原因なのは明らかで、だからこそマドン監督は大谷の起用法に関して「投手優先」と話しているのだろう。

 とはいえ、大谷が投手より打者として優れているのは衆目の一致するところ。今年のオープン戦にしても投手として0勝3敗、防御率12.19だったのに対し、打者としては31打数17安打(打率.548)、5本塁打、8打点。その実力を評価する指標のOPS(出塁率+長打率)は16割4厘と飛び抜けている。それだけに軸足はあくまでも投手に置くが、打者としての出場機会を少しでも増やしたいのが本音なのだ。

「それにマドン監督個人の事情もあるでしょう」と特派員のひとりがこう続ける。

「マドン監督はレイズとカブス、ア・ナ両リーグで最優秀監督賞を3度受賞した名将。エンゼルスには昨年から3年総額13億2000万円で迎えられたものの、1年目の昨年は地区4位に低迷。オフは投手のキンターナとカッブ、野手のファウラーと、カブスやレイズの監督時代に目をかけた選手の獲得をミナシアンGMに進言して補強が実現しただけに、今季は何が何でも結果が欲しいのですよ」

 マドン監督は大谷の登板前日、「オオタニは明日も打者として出たがっている」と話したが、本人以上に打者としての出場を望んでいるというのだ。

マメの問題は二刀流の弊害

【3】投打にフル稼働でパンクしないか?

 大谷が3月29日のドジャース戦でマメがやぶれたため三回途中で降板したことに関して、横浜やマリナーズで活躍した佐々木主浩氏は日刊スポーツでこう書いている。

「マメの問題は二刀流の弊害だと言える。私を含めた多くのプロの投手は、マメの問題は高校時代に克服している。ピッチャーに専念し、投げ込みを重ねていけば人さし指や中指はタコのように硬くなって、強くなっていく」

 大谷はそもそもマメができやすい体質だが、日本にいたころからできやすい理由は投手としての調整不足にもあるというのだ。登板日はもちろん、その前後も打者として試合に出るようなら、投手としての調整はこれまで以上に制限されることになる。

「大谷は通常、ナインの倍の練習量をこなしています。投手として守備練習やブルペン投球をやった後にコンディショニング。フリー打撃など野手としての練習はそれからですからね。キャンプでも球場を後にするのはいつも最後の方でした。ただでさえ他の選手の倍の練習をこなしているのに、打者としての出番を増やせばこれまで以上の負担がかかります」(現地放送関係者)

 投手としての不安はますます膨らむうえ、大谷の体が悲鳴を上げないか心配だ。

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