祝祭感ゼロ!東京五輪「無観客」で宙に浮いた5つの“無用の長物”…人けのない会場周辺ルポ
7月23日の東京五輪開幕まで、いよいよあと8日となった。入国後の自主隔離期間を終えたIOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長は14日、菅首相と面会。「歴史的な大会になる」と意気込んだが世間はドッチラケムード。全く盛り上がっていない。土壇場で「無観客」開催を決めたことで、役に立たない“無用の長物”が街中にあふれるありさまだ。
「『密になるな』と言われているから、人が集まるイベントはもう無理だよね……」
大会関係者がため息交じりにこう落胆するのが、東京・江東区有明と台場エリアをつなぐ「夢の大橋」に設置される「オリンピックプロムナード」だ。開会式後に聖火台が置かれ、当初は周囲でスポーツやアートのライブパフォーマンスが展開される予定だったが、もはや「通常通りの実施はあり得ない」(前出の大会関係者)という。
祝祭感ゼロの夢の大橋
日刊ゲンダイ記者も幅10メートルはある夢の大橋を歩いたが、祝祭感はゼロ。「TOKYO2020」の掲示物や、色とりどりの花が植えられた立体花壇が設置されているが、人はまばらだった。予定では、人が大挙するはずだったが、密を避けるためにほとんど見向きもされない可能性がある。
さらなる無駄の象徴は使われないまま壊される競技会場の観客席。スケートボードなどの会場「有明アーバンスポーツパーク」(江東区)には、高さ約10メートルもの仮設観客席がそびえ立つ。仮設といっても、最上段に各国の国旗がはためく立派な観客席だが、大会後は解体される予定だ。3オン3バスケなどの会場「青海アーバンスポーツパーク」(同)や馬術会場の馬事公苑(世田谷区)の巨大観客席も、一度も客が座ることなく解体される。
「アサガオ」設置も無駄に
「視覚的な暑さ対策」と話題になった「アサガオ」設置も無駄になりそうだ。組織委は「フラワーレーンプロジェクト」と称し、会場入場時の観客の列を整えるフェンスの代わりに、小学生が育てたアサガオの鉢を並べる予定。日刊ゲンダイ記者は都内のある会場にアサガオが運び込まれる様子を目撃したが、客が来ない以上、列ができることはないだろう。
「東京メトロ駅構内などに掲示された会場案内用のピクトグラム(絵文字)も観客がいないのだから結局、無意味です。五輪スポンサーが建設したPRパビリオンも、無駄になってしまった。パラリンピックはどうするのか。またギリギリで無観客が決まれば、用意したものが無駄になりかねない。早く決めて欲しいです」(前出の大会関係者)
五輪会場問題に詳しい建築エコノミストの森山高至氏はこう言う。
「これだけコロナが蔓延しているのに、政府や組織委は『観客ありき』で無観客を想定していなかったのでしょう。もっと早い時期から、無観客も想定して大会のあり方を考えておくべきでした。例えば、観客席にネット観戦が可能なウェブカメラを設置するとか。テレビとは違う観客席目線で大会を見たい国民もいるでしょう。プランBを検討してこなかったから、突然無観客になり多くの設備が無駄になってしまうのです」
最後まで有観客にこだわり、オロオロと迷い続けた菅首相の罪は重い。