【柔道】100キロ級ウルフ・アロンは初五輪 豪快な風貌に隠された「実は頭脳派」の一面
当時のウルフは170センチほどの身長で、体重はすでに100キロ。後輩の深井大吉さんが振り返る。
「今みたいなガッチリ体形ではなく、デブと呼んでも過言ではありませんでした。ですが、『走れるデブ』だった。普段は講道館裏の礫川公園でランニングするのが通例でしたが、唐突に『今日は(当時建造中の)スカイツリーまで走ろうぜ! 往復10キロだから!』と。炎天下で脱落者も出ましたが、ウルフさんは涼しい顔で完走していました」
後輩3人の証言を、講道館道場指導部次長を務める向井幹博氏は笑いながらこうまとめる。
「そんなこともありましたね(笑い)。ウルフの頭の良さは柔道にも生きています。講道館では奇麗な一本を取って勝ちを目指すことに重きを置いていますが、ウルフは『そういう奇麗事だけでは五輪で勝てない』と腹を決め、『負けない柔道』がコンセプト。まず相手の技の効力を少なくして、自分の技をはめ込んでいく。大胆な力技で押していくイメージが強いかと思いますが、実は緻密な計算をしている。高校時代から講道館の練習に来たら、自分の苦手なタイプの実業団や大学生を積極的に相手にしていました。どうしたら強くなれるかと、頭を使いながら上を目指してきたのです」
いよいよ初の五輪の舞台に立つ。