<4>小平奈緒や高木美帆らのトップ選手活躍の裏で気がかりな「次世代の空洞化」
2度目の五輪が終わったあるシーズン、苫小牧の屋外リンクで練習していたときのこと。その日は一般客もリンクを使えるオープン日で、小さい子供もいる中、私たち選手はうまく危険を回避しながら滑っていた。
すると、「おー!」という叫び声。びっくりして振り向くと、アルベールビル銅メダリストの宮部行範さん(享年48)が吠えながら子供を追いかけている。自分の進行方向に子供が入ってきたらしい。「コラー!」と叫びながらその子を捜し回っている。じゃれている感じじゃなく、結構本気で。それほど集中していたのかと唖然とした。その半面、子供の逃げ足の速さに、将来有望選手になるかも、と頼もしさを感じた瞬間だった。
宮部さんの集中力とスケートへの真剣な向き合い方にはいつも衝撃を受けていた。