(4)高津監督のプライドと慧眼「実は勝負の分かれ目は五、六回にやってくる」
この厳しい状況で先発陣を支えたのは入団10年目の小川泰弘(32)だった。9月28日時点では8勝8敗と星は五分だが、勝負どころの9月に入っての投球は極めて安定し、27イニングを投げて失点は5。小川は先発の責任を十分に果たした。
今季の小川は「モデルチェンジ」を図った。夏ごろから100キロ程度のチェンジアップを実用化し、簡単にストライクを取っていた。実績にあぐらをかくことなく、投球の幅を広げたことが成功につながっている。
そしてブルペン出身の高津監督にとって、リリーフ陣の整備にはプライドがある。高津監督は昨年オフ、「今後、強いスワローズをつくっていくためにも(五、六回を任せる)『ミドルリリーバー』の充実を心がけていきたい」と話していた。
「長年、野球を見ていると、勝負の分かれ目は、実は五、六回にやってくることが多いのに気づきます。同点、あるいは追いかけている場面で、六回をどう乗り切るか。中盤のピンチをしのげれば勝つ確率はグンと上がるんですよ」
この「ミドルリリーバー」で大成功を収めたのが慶応大を卒業して2年目の木沢尚文(24)だ。木沢は先発として期待されていたが、昨年の秋季リーグでは5回途中15失点の大炎上。先行きが心配されたが、今季からブルペンに転向。すると、威力のあるツーシームの制球力が増し、ピンチの場面で登板することが増えた。面白いことに、木沢が「消火」に成功するとその後に逆転することが多く、8勝をマーク。完全にブルペンに定着した。