球界の寝業師・根本陸夫が呪縛解き初優勝を呼び込んだ一言「王くんはな、ラーメン屋のせがれだよ」
■就任5年目、コーチや選手を前に…
しかし、そこは「球界の寝業師」である。粘り強く説得に説得を重ね、ついに95年シーズンから王はダイエーの指揮を執ることになったが、すぐに花は開かず95年5位、96年最下位、97年4位とBクラスに低迷。96年5月にはふがいない成績に激怒したファンが選手の乗ったバスを取り囲み、生卵を投げつけるという事件まで起きている。
そして王就任5年目の99年、球団社長の職にあった根本はチームが飛躍できないのは王の名前が妨げになっていると考えた。キャンプイン直前、コーチや選手を前にして根本は言った。
「おまえたち、監督に遠慮しすぎなんだよ。『世界の王』だと思うからそうなる。王君はな、ラーメン屋のせがれなんだよ」
いかにも根本らしい一言で呪縛が解けたのかこの年、王ダイエーは念願の初優勝を飾った。しかし、その喜びに根本が浸ることはなかった。選手たちに檄を飛ばした直後の4月30日、心筋梗塞で急逝していたからである。
(ライター・清水一利)