なぜ阿部詩は号泣し、須崎優衣は嗚咽したのか…溢れ出る悲壮感はメダル連発スケボー選手と天地の差
「俺も死ぬから、お前も死ね」
多かれ少なかれ、日本代表として五輪に臨む選手には重圧がかかる。無責任なメディアの期待がそれを煽る。そんなプレッシャー軽減し、前向きな力に変えさせるのも指導者の仕事のはずだが、「ニッポン柔道の威信にかけて」と青筋を立てる〝伝統競技〟ではいまだ精神論が蔓延っている。
柔道男子100キロ超級で五輪初出場となった斉藤立(22)は、準決勝に続いて3位決定戦にも敗戦。メダルなしに終わるや、泣きながら「日本に帰れない」とその責任をひとりで背負いこんだ。リベンジを期した混合団体でも精彩を欠くと、フランスとの決勝を前に鈴木桂治監督から、こう怒鳴られているのだ。
「なんのためにここに来てるんだ、なんなんだお前は。お前はよく『死ぬ気で』とか言うけど、全然、死ぬ気でやってねえよ。ここで、死ね。俺もあそこで死ぬから、お前も一緒に死ぬんだよ」
ただでさえ、重圧に押し潰されている選手を物騒な言葉で追い詰める。これが、師弟関係の愛のムチだと思っているのなら、時代錯誤もいいところ。結果、斉藤は2度の一本負けを喫し、日本は銀メダルに終わった。
畳やマットの上で、笑って踊るわけにはいかないが、味方からもプレッシャーをかけられては、選手はきつい。