「ド・ローラ節子が語る バルテュス 猫とアトリエ」夏目典子、NHK出版編
■「20世紀最後の巨匠」の芸術世界を案内
ピカソに「20世紀最後の巨匠」と称された画家バルテュス(1908~2001)の没後初の大回顧展に連動して刊行されたビジュアル・アートブック。連れ添った節子夫人が生前の素顔から私生活、そしてバルテュス芸術の本質まで、多くの作品やプライベート写真を織り交ぜながら語る。
「何かを描くときはその対象と一体化することが大切である」と語っていたという氏は、東洋の目を持ち合わせていた画家であったという。休暇を過ごしたイタリアのモンテカルベッロの風景を描いた作品は、自然と人間とが一体化した東洋の山水画を思わせる。
また絵画というものに高い理想を持っていた画家は、「美には目指すべき基準があり、感情に左右されるようなものは、本当の絵ではない」と、熱中して描いた絵を時に鏡に映し、左右逆に見ながら客観的に見直していたという。その際に使われた鏡や80年ほど前から愛用するアトリエ着などがそのまま残り、生前のままの緊張感が伝わってくるアトリエの写真や、ついのすみかとなったスイス最大の木造建築「グラン・シャレ」の内部の写真なども公開。