「星々たち」桜木紫乃著
恵まれない境遇のなかで不器用ながらそれでも生きていく塚本千春というひとりの女の運命を、彼女と関わったさまざまな人々からの視点で描いた9つの短編連作集。
第1編「ひとりワルツ」は、妻子ある男に捨てられ千春を実家に預けて働く千春の母親の視点から、女としてある男に引かれつつも夏休みに罪滅ぼしのように中学1年の娘と過ごす日常が語られる。
第2編「渚のひと」では、千春の近所に住む主婦の視点から、母と離れて暮らす千春を気遣いながらも千春と息子との関係に気づいてこっそり手を打つ一部始終が語られる。
第3編「隠れ家」では、ススキノで働く人気の踊り子と千春の出会いが描かれる。
ページをめくるに従い、千春は大人の女となり、母となり、年老いていく。千春はもちろん、出会った人たちひとりひとりが、どんなに情けない状況でもそれぞれの場所で必死に生き、そっと散っていく。
ひとつひとつの人生をいとおしむ筆者の優しい視線に癒やされる。