「諸星大二郎『暗黒神話』と古代史の旅」太陽の地図帖編集部編
諸星大二郎の傑作「暗黒神話」は1976年、少年漫画誌に6回にわたって連載された伝奇漫画。父親の死の謎を追うヤマトタケルの生まれ変わりの少年・武の冒険に、古代史と神話が組み合わさり、複雑で壮大なストーリーが展開する。本書は、今なお多くの読者に愛されるこの作品に登場する実在の古墳や神社、遺跡などを紹介しながら、その作品世界を案内するビジュアルムック。
物語は長野県の諏訪市・茅野市から始まる。「尖石考古館」で歴史学者を自称する老人・竹内に会った武は、蓼科山の人穴(洞窟)へと誘われる。諸星氏によると、ある本で「諏訪の山中に縄文時代から崇拝されていた痕跡のある巨石(尖石)」の存在を知り、この石から湧き上がったイメージが同遺跡からの出土品である「蛇体把手付土器」と結びつき、「暗黒神話」への構想へとつながっていったという。
続いて物語の舞台は、武と敵対する菊池一族の本拠地である九州北部へと移る。ストーリーの軸となる武と菊池一族の当主「菊池彦」の対決は、大和が「熊襲」を圧する記紀のヤマトタケル説話に由来する。作中で武が菊池彦に連れられ巡る「珍敷塚古墳」や「千金甲古墳」など、独自に花開いた当地の装飾古墳を紹介。