著者のコラム一覧
宮城安総工作舎アートディレクター

1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。

細工は流々、日本全国「市」ガイド

公開日: 更新日:

市めくり タイムマシンラボ編著

 表紙が見えるよう、本棚にディスプレーすることを「面陳」と呼ぶ。偶然立ち寄った書店の壁面が本書で埋め尽くされ、思わず手に取りしばし見入る。

「朝市から縁起物の市まで日本各地の『市』ガイド」。春夏秋冬・各季節の市/日々の市/クラフト+フードマーケットの6部構成。A5・並製。全ページ・カラー。袖の部分を内側に折り込む「がんだれ表紙」。本文の天方向は「アンカット」=不揃いのまま。ただ今流行の「腰高の帯」は、実質的な「顔」。新聞を模し、天方向を細かい波型で「型抜き」加工。芸が細かい。さらに、そのレイアウトは新聞の「段組み」を意識した「割り付け」風。本文用紙は、空気を多く抄き込んだ「嵩高」用紙。刷り色は落ち着き、控えめな発色が好印象。読者を手招きするように優しく穏やかなトーンで全編をまとめている。

 さて、全体のページ構成について。6カ所に部扉が入る。びょうぶのように、左右ページを一つながりの扉に見立てる「見開き扉」の効果は侮れない。本書を手に取ったら、左手の親指で小口を押し広げてみて欲しい。6本の色付きラインが鮮やかに浮かび上がる。これは見開き扉全面に色を敷いているため。扉の位置を示すインデックスとして機能する。親指を希望の位置までずらせば、即座にアクセス可能。右手に持ち替えると、もう少し賑やかに。裁ち落としの写真はすべて右ページに掲載のルールを順守。大判写真と扉の色帯が一斉に小口に顔をのぞかせる寸法だ。では本文レイアウトは? タテ/ヨコ組みが混在。性質が異なるいろいろなサイズ/レベルの「ミニ情報」、写真キャプション等々が配置される。これだけさまざまな情報を盛り込むと紙面がザワつくものだが、細工は流々、紙面のグリッド(分割)設定と情報の「モジュール化」により、コンパクトに整理されている。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕の理想の指導者は岡田彰布さん…「野村監督になんと言われようと絶対に一軍に上げたる!」

  2. 2

    小泉進次郎氏「コメ大臣」就任で露呈…妻・滝川クリステルの致命的な“同性ウケ”の悪さ

  3. 3

    綱とり大の里の変貌ぶりに周囲もビックリ!歴代最速、所要13場所での横綱昇進が見えてきた

  4. 4

    永野芽郁は映画「かくかくしかじか」に続きNHK大河「豊臣兄弟!」に強行出演へ

  5. 5

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  1. 6

    元横綱白鵬「相撲協会退職報道」で露呈したスカスカの人望…現状は《同じ一門からもかばう声なし》

  2. 7

    関西の無名大学が快進撃! 10年で「定員390人→1400人超」と規模拡大のワケ

  3. 8

    相撲は横綱だけにあらず…次期大関はアラサー三役陣「霧・栄・若」か、若手有望株「青・桜」か?

  4. 9

    「進次郎構文」コメ担当大臣就任で早くも炸裂…農水省職員「君は改革派? 保守派?」と聞かれ困惑

  5. 10

    “虫の王国”夢洲の生態系を大阪万博が破壊した…蚊に似たユスリカ大量発生の理由