台湾が舞台の長編小説「流」を上梓 東山彰良氏に聞く

公開日: 更新日:

 ノスタルジーに拍車をかけるのは、強烈な個性をもつ登場人物たちだ。

 戦火を生き延びた強運で豪腕の祖父、ゴキブリを素手で仕留める祖母、お調子者の叔父に裏稼業のもうひとりの叔父。また、話に尾ヒレがついてデカくなる近所の爺さんたち、女たらしで町内の嫌われ者、素行不良の喧嘩詩人など、愛嬌のある人物も多い。

「僕が台湾にいたころ、町内にこういう人が実在したんです、決して人格者ではないモデルが(笑い)。そもそも中国人はB型気質が多く、基本的にはわがまま。歩み寄らないが、すり寄らない。互いに甘やかさない関係と人物像で描いていきました」

 多彩な人間模様を織り交ぜ、恋と友情と成長を描く青春エンタメだが、それだけではない。何者かに祖父を惨殺され、復讐を誓う秋生が謎を追う緊迫感も。その根底には台湾がたどった悲しい歴史があり、分断された人々の心模様が緻密に描かれている。

「主人公のモデルは僕の父です。大学で教壇に立っていた父は、かつての戦地を訪ね、生き残った親族を探していましたからね。中国大陸生まれなので、血族や故郷に対する思いが人一倍強いのかもしれませんが。冒頭に引用した詩も、実は父が書いたもの。作家になったときから1冊は家族に捧げる本を書きたいと思っていて、それがこういう形になりました」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  2. 2

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  3. 3

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  4. 4

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  5. 5

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  1. 6

    おすぎの次はマツコ? 視聴者からは以前から指摘も…「膝に座らされて」フジ元アナ長谷川豊氏の恨み節

  2. 7

    大阪万博を追いかけるジャーナリストが一刀両断「アホな連中が仕切るからおかしなことになっている」

  3. 8

    NHK新朝ドラ「あんぱん」第5回での“タイトル回収”に視聴者歓喜! 橋本環奈「おむすび」は何回目だった?

  4. 9

    歌い続けてくれた事実に感激して初めて泣いた

  5. 10

    フジ第三者委が踏み込んだ“日枝天皇”と安倍元首相の蜜月関係…国葬特番の現場からも「編成権侵害」の声が