脳のメカニズムに詳しくなろう編
さて、いつも女を泣かせている人(うらやましい!)や、女性の涙に悩まされている人にとって、なぜヒトは涙を流すのか、というのは大きなナゾである。
涙には緊張状態を緩和する化学物質が含まれているという仮説もあるが、おもしろいのは涙のニオイに着目した仮説だ。
神経生物学者ノーム・ソベル氏の研究チームが、映画を見て泣いた女性の涙を男性に嗅いでもらい、その結果〈女性の涙は、男性の性欲を減退させる〉という結論にたどりつく。実はこの効果は男性の涙にもあると考えられ、〈涙は相手の攻撃性を低下させる〉という。だが、著者はニオイよりも涙の視覚的効果に注目した。ヒトは哺乳類には珍しく顔に毛がないため、涙に気づきやすい。そこで、子どもが親に泣いて訴えるように、相手を庇護してあげたいという思いを高めるために発達したと考えるに至った。
涙以外にもヒトを不安にさせる出来事は多い。しかし、不安を感じるのは、ヒトが狩猟採集生活をしていた時代からDNAに伝えられた反応なのだ。狩猟採集民に死をもたらすのは、毒蛇、猛獣、落雷、樹上からの落下、溺死など。