時代小説でめぐる「東海道五十三次」編
■第34宿〈吉田〉「天明の密偵」中津文彦著
生家が伊勢神宮の御師を生業とする白井秀雄に、吉田藩主・松平信明らから蝦夷地探索の話が舞い込んだ。御師は伊勢参拝の手引きをする表の顔とは別に、各地の情報を提供するのが裏稼業。
学者として芽が出ずにいた秀雄は気が進まないながらも引き受け、天明3(1783)年、吉田を後にする。最初のうちこそ探索の成果を報告していたが、信濃、越後、出羽の道筋を進むうち、秀雄は旅の途中で接した風俗や民俗に興味を抱くようになる。松前から戻ったあとは秋田を拠点に東北の風俗調査に明け暮れる――。(PHP研究所 800円+税)