【受け継がれる戦争体験】直接の体験者の数が年々減少し、戦争体験が空洞化しようとしている。テロの世紀にこそ、戦争体験の継承が必要だ。
「13歳のホロコースト」エヴァ・スローニム著、那波かおり訳
チェコに隣接したスロバキアの首都ブラチスラバ。ここで裕福な生地商人の一家に生まれた少女は伯父さんら親戚に囲まれて幸福な子ども時代を送っていた。その暮らしを突然引き裂いたのがナチの台頭。少女と家族、友人知人らは次々に収容所に送られ、やがてガス室へ……。「アンネの日記」の物語はどこにでもあったのだということが本書を読むと痛感される。
目を引くのはドイツ軍が侵攻したとたん、すぐに地元の社会にもナチのSS(親衛隊)を模した「フリンカ親衛隊」なる極右集団が現れたこと。強い者の尻馬に乗るように出現する右翼は、時代を超えていつの時代にもいるのだと改めて思わされる。(亜紀書房 2300円+税)