【プロパガンダの過去と現在】「戦争法案」騒動で弱腰に終始した大手マスコミ。その裏には権力によるプロパガンダの歴史が深く横たわっている。

公開日: 更新日:

「戦争と新聞」鈴木健二著

 毎日新聞で政治記者を長年つとめた著者。その人がこう言う。

 戦後70年、日本は直接戦争に巻き込まれることはなかったがゆえに日本の新聞は国益をにらみつつ報道の自由を追求するせめぎ合いを経験しなかった。そのひ弱さが、いま「平和安全法制」などの名目下で進められる戦争法案の制定をみすみす許す結果になっている。

「新聞は攻めているときは強いが、守りに回ればこれほど弱いものはない」のだ――。

 本書はこんな立場から明治・大正・昭和、そして戦後の3期にわたって日本の新聞界がいかに権力のプロパガンダと戦い、弾圧を受け、また巻き込まれて翻弄され、ときには片棒を担いできたかを詳しく検証する。

 特に戦前の東京日日新聞(現在の毎日新聞)の動きがつぶさに観察されるのは自分の出身母体だからだろう。マスコミ嫌いだがマスコミ操縦にも長けていた佐藤栄作政権の手法に触れながら、わずかな潮目の変化で激しいマスコミ論調が嘘のように引いていく過程も見逃さない。気骨の新聞人による気迫の新聞批判だ。(筑摩書房 800円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  2. 2

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  5. 5

    貧打広島が今オフ異例のFA参戦へ…狙うは地元出身の安打製造機 歴史的失速でチーム内外から「補強して」

  1. 6

    紀子さま誕生日文書ににじむ長女・眞子さんとの距離…コロナ明けでも里帰りせず心配事は山積み

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    メジャー挑戦、残留、国内移籍…広島・森下、大瀬良、九里の去就問題は三者三様

  4. 9

    かつての大谷が思い描いた「投打の理想」 避けられないと悟った「永遠の課題」とは

  5. 10

    大谷が初めて明かしたメジャーへの思い「自分に年俸30億円、総額200億円の価値?ないでしょうね…」