「美しい鳥 ヘンテコな鳥」川上和人監修・執筆
求愛のディスプレーのため、頭の周囲を覆う真っ赤な羽毛を嘴が見えなくなるほど逆立て、ゾウアザラシのような顔になった「アンデスイワドリ」、水色のレースで編んだかのような繊細なモヒカン頭の「オウギバト」、同じ水色の頭部をしているが、こちらは羽毛ではなく頭の肌の色が水色で、体は黒地に赤と黄色の羽毛で彩られた、まるで信号機のような「アカミノフウチョウ」など。どのページを開いても、驚きと感嘆に満ちた鳥ばかりがこれでもかと出てくる。
古名では「翡翠」と呼ばれ、宝石の名の由来ともなっている「カワセミ」も、こうした鳥たちの中に交じると、特別な鳥に見えてこなくなるほどだ。これらの過剰なまでの装飾や色調豊かな色彩は、まるで異性の気を引くために努力を惜しまぬ人間のようでもあり、そんなところも親近感が湧く理由かもしれない。
しかし、「エトロフウミスズメ」の昭和の芸人のようなくるりと巻いた前髪は逆光の中で同種を見分けるため、「サイチョウ」の嘴の上に突き出した巨大な角は鳴き声を共鳴させる音響機材と、それぞれの役割を知ると、さらに、彼らの世界の不思議に魅せられる。