「大地の五億年」藤井一至著
土と生物の5億年にも及ぶ歩みを追ったサイエンス・ノンフィクション。
土は植物が存在する地球のみにある。5億年前、藻類を先祖に持つコケが長い進化の末に陸に上がることに成功。コケと、カビと藻類が合体した地衣類は岩石にへばりつき、栄養分を吸収するため酸性物質を出して溶かす。その溶かされた栄養分が残存し、砂や粘土に。コケや地衣類の遺骸と共にまじりあったものが地球に最初に現れた土だという。カナダにはこの地球最初の土を観察できる場所があるという。
生き物を育み、同時に生き物が育んできた土は、多くの生き物たちの痕跡が眠る墓標でもある。土をめぐる生き物たちの攻防を解説しながら、温暖化や砂漠化など、土を取り巻く現代の問題にまで目を向ける。(山と溪谷社 900円+税)