「我ら荒野の七重奏」加納朋子著
出版社で働く山田陽子は、一人息子の陽介が中学に入ったのでこれで一息つけると最初は思う。小学校時代は親の負担が多くて大変だったが、もう中学生なんだからあんなことはあるまいと思うのが人情というものだ。ところが吹奏学部に入った陽介が希望するトランペットを担当できないと聞いて早速学校に乗り込んでいく。陽子に言わせれば中学は理不尽なことばっかりなのだ。もっともこればかりは事情を説明されると諦めざるを得ないのだが。
演奏会場の予約のために、真夏に徹夜で市民ホール前に並んだり、部活動をママボスが牛耳っていたり、次々にさまざまなことが起こるので、ホント、大変である。中学の部活動にこれだけ親の負担が多いとは驚く。その親たちの奮闘を丸ごと本書は描いていく。
中学の部活動を親の側から描くというのは珍しい試みだが、ヒロインをはじめ、脇役たちの造形も良く、さらに挿話も面白いのでどんどん引き込まれていく。特に、ヒロイン陽子の勇ましさに注目。仕事も育児も全力で取り組むブルドーザー陽子はどんな敵でも正面からぶつかっていくから痛快である。
一人息子の陽介が小学生時代、このヒロインがどんな戦いをしてきたかは、前作「七人の敵がいる」を読まれたい。笑いと涙の、このPTAエンターテインメントシリーズ、おそらくまだまだ続刊は書かれるだろう。第3作を楽しみに待ちたい。(集英社 1500円+税)