「わが子に会えない」西牟田靖氏
かつての家制度が生きていた日本では、離婚となれば一方的に母親が追い出され、二度と子供に会えなくなるような悲劇も起きていた。やがて時代が進み、女性の権利が守られるよう変化してきたことは良い傾向だが、その反動が大き過ぎた。現在のように女性にばかり有利な制度が暴走すれば、一番被害を受けるのはやはり子供だ。
「父親から子供を遠ざけようとする母親側の強固な姿勢により、子供に情緒不安定や対人関係構築の困難さが生じる『PAS(片親疎外症候群)』という症状が表れることもあります」
日本もアメリカなどのように、父親と母親に差をつけることなく共同親権で子供と関わることのできる制度の変革が必要だ。しかしその前には、子供と会えなくなっている父親たちの現状を広く知ってもらい、問題提起につなげることが不可欠だと著者。
「父親たちもひとりで抱え込まず、支援団体などに相談し、声を上げるところから始めて欲しいと思います」(PHP研究所 1650円+税)
▽にしむた・やすし 1970年、大阪府生まれ。神戸学院大学卒業。ノンフィクション作家。2005年、旧日本領のその後を訪ね歩いた「僕の見た『大日本帝国』」が新潮ドキュメント賞候補作となる。著書に「ニッポンの国境」「誰も国境を知らない」「ニッポンの穴紀行」などがある。