“メディア良化委員会”と闘う図書隊防衛員
「図書館戦争 図書館戦争シリーズ①」 有川浩著/角川文庫 667円+税
【話題】現在、国会で審議されている共謀罪は、監視社会につながる危険性が大きな論点とされている。それは権力の恣意的な判断により、表現の自由が犯される危険をもはらんでいる。本書は、過剰な「検閲」に対して敢然と立ち向かっていく「図書隊」を舞台にした近未来小説。
【あらすじ】公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる「メディア良化法」の成立を受け、メディア良化委員会は、すべてのメディアの良化を目指し、書籍や映像作品などを検閲し始めた。同法に反すものの販売や流通を阻止するために武力を用いるなど、今や人々が自由に本を出版したり読むことができなくなっていた。
この委員会に唯一対抗できるのが図書館で、「図書館の自由法」を盾に、良化委員会の攻撃に対処すべく武装した「図書隊」を組織。双方の対立は激化の一途をたどっていた。笠原郁は図書特殊部隊に入隊し、女性初の特殊部隊員に抜擢される。郁が図書隊を志願したのは、高校生のとき、彼女が買おうとした本を良化委員会に没収されそうになったのを、危うく救ってくれた図書隊員に憧れてのこと。顔を覚えていないその「王子様」に会いたくて訓練に励むが、上官の堂上はそんな甘えを打ち砕くように厳しく当たってくる。
堂上に反発を覚えながらも、隊員としての自覚を身につけていく郁だが、自由派の牙城だった私設図書館が閉鎖することになって、良化委員会と図書隊は一触即発の事態となる……。
【読みどころ】特定秘密保護法や共謀罪といった、きな臭い法律が取り沙汰されている現在、本書が書かれた11年前に比べ、この物語の世界に近づいているのではという恐れが杞憂であればいいのだが。同シリーズは全6作。〈石〉