「あとは野となれ大和撫子」宮内悠介著
ソ連末期に建国された中央アジアの小国アラルスタン。農業支援で赴任していた両親と共にこの国で暮らしていた日本人少女ナツキは5歳のときに内戦に巻き込まれ、両親を失う。それから15年。孤児となったナツキは、第2代大統領アリーの肝いりで将来有望な少女たちを政治家や外交官として養成する教育機関となった後宮に引き取られ、間もなく卒業を控えていた。
ところが、独立記念日に大統領が暗殺され、政府中枢の面々は皆逃げ出してしまう。残された後宮の少女たちは、リーダー格のアイシャを大統領代行に、ナツキが国防相、ナツキの親友ジャミラが文科相となって臨時政府を樹立。しかし、この政変に乗じて石油の利権を狙う周辺諸国、さらには反政府のイスラム原理主義勢力も不穏な動きを見せている。この危機にナツキたちは、祖国をなくしてならないと直接国民に呼びかけ、少しずつ支持を得ていくのだが、その行く手には……。
荒唐無稽な設定ではあるが、権謀術数をもてあそぶ大人たちの政治手法に異を唱える彼女たちの真っすぐな声が胸に突き刺さる。(KADOKAWA 1600円+税)