「武者始め」宮本昌孝著
上杉景勝に人質として送られてきた真田昌幸の次男、弁丸(後の真田幸村)が拝謁した。
19歳だが、まだ前髪立ちの童形で、出っ歯でひどい縮れ毛という異相である。景勝が弁丸を見据えて「美男は好かぬ」と言うと、弁丸は、父が美男の兄・信之ではお気に召すまいと自分を送ったと説明する。
かつて景勝と家督争いをして敗れた義弟の景虎は大変な美男であった。近習衆は景勝が激怒するのではないかと思ったが、弁丸が、兄とは互いに「ぶさいく」「にやけ」と呼びあっていると答えると、景勝はちょっと笑って弁丸に知行を与えた。これが弁丸の「武者始め」だった。
信長、秀吉らの知られざる「初陣」を描く時代小説7編。
(祥伝社 1600円+税)