「護られなかった者たちへ」中山七里著

公開日: 更新日:

 仙台市の老朽化した無人アパートから四肢の自由を奪われ口をふさがれた餓死死体が発見された。被害者は同市の福祉保健事務所課長の三雲。飲まず食わずで放置されるという残忍な手口から怨恨の線で捜査が進められたが、三雲は公私ともに人格者として知られており、物取りの可能性も低い。

 確たる手がかりのない中、今度は県会議員の城之内が同様の手口で殺害される。こちらも清廉潔白を絵に描いたような人物。三雲と城之内の関係を洗っているうちに、服役を終えたばかりの利根という男が浮かび上がってくる。利根は8年前に、知り合いの老婦人の生活保護申請を巡って福祉事務所に乗り込み、暴行の揚げ句事務所に放火したのだ。“善人”とされる2人と利根の間に何があったのか……。

 本書で描かれているのは、日本の生活保護政策の暗部である。法と不法、善と悪、正義と不正、罪と罰といった相反するものが複雑に入り組んでいる福祉行政の現場の問題点を、ミステリーの視点から暴き出した問題作。(NHK出版 1600円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  2. 2

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  3. 3

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  4. 4

    中居正広氏「性暴力認定」でも擁護するファンの倒錯…「アイドル依存」「推し活」の恐怖

  5. 5

    大河ドラマ「べらぼう」の制作現場に密着したNHK「100カメ」の舞台裏

  1. 6

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  2. 7

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  3. 8

    下半身醜聞ラッシュの最中に山下美夢有が「不可解な国内大会欠場」 …周囲ザワつく噂の真偽

  4. 9

    フジテレビ第三者委の調査報告会見で流れガラリ! 中居正広氏は今や「変態でヤバい奴」呼ばわり

  5. 10

    トランプ関税への無策に「本気の姿勢を見せろ!」高市早苗氏が石破政権に“啖呵”を切った裏事情