乗らなくても面白い鉄道本特集

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「日本鉄道事始め」髙橋団吉、NHK「ニッポンに蒸気機関車が走った日」制作班編著

 4年後に開業150周年を迎える日本の鉄道。新幹線や豪華寝台車など世界の最先端を走り、テツと呼ばれる幅広いファン層を持つ一方で、赤字路線の廃線などが相次ぎ、歴史の転換点を迎えようとしている。今週は、そんな鉄道関連書を特集する。

 日本の鉄道は、欧米諸国に遅れること約半世紀、明治5(1872)年9月12日(新暦10月14日)に新橋―横浜間で開業。その後の半世紀で遅れを挽回し、さらに半世紀をかけて新幹線を開通させ、世界の鉄道のトップランナーに上り詰めた。鉄道建設は、機械工学や土木技術、鉄鋼生産、都市計画、そして兵員武器の輸送力アップなど、近代化を牽引する役目も果たした。

 本書は、鉄道開業までの経緯をひもときながら、明治150年の原点に迫る歴史読み物。

 鉄道建設を推進した大隈重信らと、西郷隆盛ら反対派の双方の思惑、莫大な建設資金の調達法、2カ所の海上ルートが選ばれた理由、そして鉄道開業がもたらした日本人のきちょうめんな時間感覚などQ&A形式で日本初の鉄道開業をさまざまな視点から解説する。

 (NHK出版 1700円+税)

「テツ語辞典」池田邦彦・絵、栗原景・文

 鉄道ファンといっても「撮り鉄」や「乗り鉄」など、興味の対象やジャンルは多岐に及ぶ。彼らから誕生した膨大な鉄道趣味用語や業界用語を解説した面白辞典。

「電気釜」=車体が釜、運転台が蓋に見えたことから、485系や183系などの非ボンネット・非貫通型特急電車につけられたあだ名。

 そんなマニア用語から、ダム建設で水没したが、毎年水位が下がると姿を見せる旧国鉄士幌線の美しい「タウシュベツ橋梁」などの歴史や名所関連用語、車輪で踏むと爆音を出し乗務員に警告や停止指示を出す特殊信号機器「信号雷管」などの設備用語、そして立川駅名物「おでんそば」や鉄道関連書籍が充実した「書泉グランデ」など、グルメや聖地まで約900語を収録。

 イラストや豆知識が随所にちりばめられたテツ必携本。

 (誠文堂新光社 1400円+税)

「アニメと鉄道」「旅と鉄道」編集部編

 アニメに登場する鉄道シーンが楽しめるビジュアルブック。

 大ヒットを記録した新海誠監督の「君の名は。」では随所に駅や鉄道シーンが効果的に使われる。飛騨古川駅に停車する「ワイドビューひだ」を跨線橋から俯瞰した場面などを映画から紹介。

 さらに鉄道が登場人物の関係性に重要な役割を果たす「ほしのこえ」など、まずは新海作品6タイトルを特集する。その他、「この世界の片隅に」(片渕須直監督)の広島・呉など人気作品の舞台となった土地を訪ねる聖地巡礼の旅。

 さらに鉄道ファンが思わずニヤリとする列車が多数登場する「笑ゥせぇるすまん NEW」第3話「ああ、愛しの583系」など、鉄道シーンが印象的なアニメまで。

 急増するアニメ兼鉄道ファン=「アニ鉄」の心をくすぐる一冊。

 (天夢人 1800円+税)

「鉄道『裏歴史』読本」小川裕夫著

 鉄道は単なる交通機関にとどまらず、政治や経済と密接に関わり、その時々の社会問題を如実に反映する。そうした鉄道の知られざる裏面史を紹介するウンチク本。

 現金輸送車「マニ30」は、国鉄時代、紙幣を日本銀行の各支店に届けるため12両だけ製造された。当初は鉄道雑誌などで紹介されていたが、安全のために情報管理が徹底され、その後、客車形式図からも抹消され、タブー化したという。

 その他、原子力発電所の研究よりも早く進められていた原子力を動力源とする機関車開発の事実や、バキュームカーが普及する以前の昭和初期、糞尿を周辺の農村に運んだ「黄金列車」の存在、当時は辺鄙だった原宿駅に天皇専用ホームが造られた理由など。62のトピックスで鉄道の歴史に隠された意外な真実を明かす。

 (イースト・プレス 686円+税)

「競馬と鉄道」矢野吉彦著

 競馬と鉄道の知られざる関係を解き明かす歴史エッセー。

 万延元(1860)年、近代競馬が日本に持ち込まれた。外国人のために行われていたレースに日本人も加わるようになり、乗馬に造詣の深かった明治天皇も積極的に奨励。明治天皇は、明治14(1881)年には横浜の根岸競馬場に汽車で行幸。これが日本の競馬観戦用臨時列車のルーツだという。続々と日本人主宰の競馬会社が設立され、当初は禁止されていた馬券付き競馬が始まると一大ブームが巻き起こる。ブームに貢献したのが次々と開業していた鉄道だった。

 各地の「競馬場駅」誕生の経緯や、競合する路線の競馬客誘致合戦、さらに鉄道会社が関わるレースや海外の競馬場駅事情まで、豊富な資料を挙げながら持ちつ持たれつの関係を解説する。

 (交通新聞社 800円+税)

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