サッカー狂騒曲

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「億万長者 サッカークラブ」J・モンタギュー著 田邊雅之訳

 ようやく終わったW杯。何とかメンツを保った西野ジャパンだが、どうやらサッカー界は問題山積?


 イタリアの名門クラブ、ユベントスがレアル・マドリードからC・ロナウドを1億ユーロで獲得というニュース。これに怒ったのがユベントスの最大株主アニエッリ家が保有する自動車企業フィアットの労働者。日本円で移籍金約130億円、ロナウドの年俸の約39億円を払えるのなら真面目な労働者の給料を上げろというわけだ。

 英国のジャーナリストが書いた本書によると、実は世界の名門クラブの所有者たちは特にサッカーを愛しているわけではない。国営企業を乗っ取ったロシアの「オリガルヒ」(新興財閥)や金にあかせて贅沢三昧の中東の王族、そして近年では中国の起業家たち……。要は金満セレブの暇つぶしというわけだ。それでも世界的なサッカー熱は盛んになるばかり。著者はそんな人間の愚かしさを巧みにあぶり出している。

(カンゼン 2200円+税)

「日本サッカー辛航紀」佐山一郎著

 全盛期の「スタジオ・ボイス」編集長だった著者は幼年期からのサッカーファン。Jリーグ誕生後はサッカージャーナリストとしても活躍してきた。そんな著者が挑む日本サッカー「愛と憎しみの100年史」(副題)。

 日本古来の蹴鞠との縁に始まり、「蹴球」「フットボール」「サッカー」(中には「ソッカー」「フートボール」も)の名称にまつわる歴史にも触れつつ64年東京五輪前後の第1次ブームから岡田、トルシエ、ジーコ代表監督らの「空前の活況」、そして「代表バブルから遠く離れて」の現在までをたどる。 各時代に出版されたサッカー本を多数紹介している点もユニーク。単なるブックガイドではなく、寺山修司とサッカー、雑誌「イレブン」、F1ブームも重なって絶頂を極めた雑誌「ナンバー」への言及など著者ならではの観察眼と「業界人」らしからぬ自己省察が奥行きを深めている。サッカーファンにも非ファンにも読まれるべき一冊。

(光文社 900円+税)

「砕かれたハリルホジッチ・プラン」五百蔵容著

 突如の解任で大騒ぎになった元日本代表監督ハリルホジッチ。W杯が始まると名前すら聞かなくなってしまったが、一因は日本のスポーツマスコミが総じて冷淡だったこと。そこで人気ゲームクリエーターからサッカー評論に進出した著者が大のハリルホジッチファンの立場で一大擁護論をぶったのが本書だ。

 主張のキモは、世界に通じるハリルホジッチのサッカー理論を日本人が誤解したこと。監督就任時に言った「攻撃的なサッカー」の意味からして日本のマスコミは本田や香川をイメージするだけで真意を理解できなかった。実際のプレーを視覚化した独特の図解が多数掲載されている。

(星海社 980円+税)


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