「日本懐かし団地大全」照井啓太著
著者によると、今は「第2次団地ブーム」だとか。日本住宅公団が猛スピードで各地に団地を建てていた昭和30年代半ばから昭和40年代前半にかけてが第1次ブーム。しかし、日本が豊かになると団地は時代遅れの存在となり、かつての輝きを失ってしまう。
ところが、10年ほど前から、周囲の風景から浮いていると思われていた団地が「古き良き日本の風景の一部」と見直され、その魅力が再認識されているという。本書はそんな団地の魅力を伝えるグラフィックブック。
まずは日本を代表する「名作団地」を紹介。
昭和34年に入居が始まった「ひばりケ丘団地」(西東京市・東久留米市)は、総戸数2714戸という日本初のマンモス団地。敷地内にスーパーマーケットから役場の出張所、テニスコート、交番まで備え、「独立した新しい街」として誕生した。
緑豊かな広大な敷地に、一般的なようかん形の住棟に加え、戸建て感覚のテラスハウスやスターハウスと呼ばれるY字形の住棟など、さまざまなタイプがあり、団地に抱く画一的なイメージが覆される。
その他、スローライフの先駆者として知られる建築家の津端修一氏が設計した千葉県船橋市の「高根台団地」や兵庫県宝塚市の「仁川団地」など、10カ所を巡る。
近年、昭和30年代に建てられた団地の取り壊しや建て替えが進み、実はこれらの多くも現存していないのだそうだ。
後半は今も人々の暮らしが続く各地の団地を建築年代別に紹介。
ページの合間には、団地のランドマークともいえる個性的な給水塔や、遊び場や集会所などの付帯設備、そして団地暮らしの実際にスポットライトを当てるなど、さまざまな角度から団地特有の空間が持つ「包容力」や「安心感」など団地の魅力に迫る。
(辰巳出版 1500円+税)