「数学パズル大図鑑 Ⅰ・Ⅱ巻」イワン・モスコビッチ著 東田大志監訳 櫻井香織訳

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 AIがいつの間にか暮らしの中に入り込み、人間が仕事を奪われる大量失業の予測が現実味を帯びてきた。AIに対抗するため、既成概念にとらわれず、斬新で型破りな考え方をする「創造力」が求められる時代になったともいえる。

 その想像力を鍛えてくれるのがパズルだ。パズルはそれぞれの中に眠っている創造力を解き放つのにぴったりなのだとか。

 古今東西の名問・難問パズルを紹介する本書は、エンターテインメント本であると同時に、パズルを解くことで「思考法を発展させ、芸術・科学・数学に共通する概念の融合」(著者)を感じることができるよう構成された2部構成の大著。

 まずは古典的思考パズルでパズルを解く能力をウオーミングアップする。

 その中の1問。かつてある学生が鉛筆1本だけを使って、「三角形の3つの内角の和は180度」の証明をユークリッドよりも単純な方法で証明した。それはどんな方法だったのか、という問い。

 数学が苦手な人でも答えを知れば、そのシンプルな考え方に感動すら覚えるはず。

 以降、アルキメデスが王様から命じられて、新しい王冠が純金かどうかを判定し、混ぜ物の真偽を確かめる方法のために思いついたという原理から、2011年発表の「最も難しくシンプルなスライドロックパズル」と称賛される「シンプリシティー」まで315問を収録。

 各パズルに取り組みながら読み進むうちに、各パズルが歴史のどの段階で生まれ、「背景にはどのような思想が存在し、解くためにはどのような論理が用いられたのか」(監訳者)が分かりやすく身につき、数学史、科学史に詳しくなれるという。認知症予防にもおすすめの秋の夜長の読書にぴったりの優れ本。

 化学同人 各2500円+税)

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