「神社のどうぶつ図鑑」茂木貞純監修

公開日: 更新日:

 神社の境内には、狛犬をはじめ、キツネやサルなど、さまざまな動物の像が置かれている。これらの動物は、神に仕えるものと考えられ、「神使」「眷属」などと呼ばれる。神社に神使の像が置かれるのは、人前に姿を現さない神の意志を代理として伝えると考えられてきたからだそうだ。

 神社によって神使とする動物は多岐にわたり、中には想像上の霊獣までいる。本書は、それらの動物・霊獣と神社の関係を解説した図鑑。

 京都の伏見稲荷大社をはじめ、全国に3万社以上鎮座する稲荷神社の眷属はご存じのようにキツネだ。古来、山の神は里へ降りると田の神・稲荷神になると信じられていたことから、山と里の中間の里山にすむキツネが、稲荷神の使いと考えられるようになったという。また、キツネの毛色や尻尾が稲穂を想起させることにちなむともいわれているそうだ。

 他にも、日吉大社(滋賀)や日枝神社(東京)のサル、北野天満宮(京都)や太宰府天満宮(福岡)のウシ、三峯神社(埼玉)のオオカミなど、162社それぞれの神使を網羅し、その由来や御利益などを解説する。

 中には、もともとは日本に生息していなかったヒツジを神使とする愛知県の「羊神社」や、鉱脈をつかさどる神の使いとして信仰されてきた「ムカデ」をご神宝にする埼玉県の「聖神社」など、知れば知るほど先人たちのあつい信仰心に感服するとともに、日本人の魂の起源に触れるような思いがする。

 ちなみに神社の守護や魔よけの役割を果たす狛犬は、イヌではなく霊獣。獅子(ライオン)を見たことがない古代の日本人は、これを異国のイヌととらえ、「高麗犬」と呼ぶようになり、それが転じたものという。

 神社巡りのガイドブックにもなってくれる図鑑。

(二見書房 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    僕の理想の指導者は岡田彰布さん…「野村監督になんと言われようと絶対に一軍に上げたる!」

  4. 4

    永野芽郁は大河とラジオは先手を打つように辞退したが…今のところ「謹慎」の発表がない理由

  5. 5

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  1. 6

    大阪万博「午後11時閉場」検討のトンデモ策に現場職員から悲鳴…終電なくなり長時間労働の恐れも

  2. 7

    威圧的指導に選手反発、脱走者まで…新体操強化本部長パワハラ指導の根源はロシア依存

  3. 8

    ガーシー氏“暴露”…元アイドルらが王族らに買われる闇オーディション「サウジ案件」を業界人語る

  4. 9

    綱とり大の里の変貌ぶりに周囲もビックリ!歴代最速、所要13場所での横綱昇進が見えてきた

  5. 10

    内野聖陽が見せる父親の背中…15年ぶり主演ドラマ「PJ」は《パワハラ》《愛情》《ホームドラマ》の「ちゃんぽん」だ