「君は玉音放送を聞いたか」秋山久著

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 日本でラジオ放送が始まったのは1925年。その年の受信契約数は5455件。それが敗戦の年の45年3月には747万件と飛躍的な伸長ぶりをみせた。特筆すべきは、この20年間は満州事変、日中戦争、太平洋戦争と、日本が戦争へと邁進した時期だったこと。ラジオも当然その影響を強く受けたり、自ら率先して「国策放送」の色合いを深めていった。本書はラジオがいかにして戦争協力の道を歩んでいったかの実像を描き出している。

 まず取り上げるのは、45年8月15日の降伏を告げる「玉音放送」を巡って、放送を阻止しようとする「抗戦派」による玉音放送の録音盤奪取計画と放送局占拠の模様が詳しく語られる。続いて、真珠湾攻撃で戦死した特殊潜航艇の9人の戦死が、事実をねじ曲げて「九軍神」と祭り上げられた経緯とそこに果たしたラジオの役割を記す。その他、軍部の監視下で行われた「大本営発表」の実態、戦後のGHQの検閲問題などにも言及する。

 元NHK放送記者の著者は自らの経験も踏まえ、過去の事実を丁寧に検証し、現在のジャーナリズムが同じ轍を踏んではならないという力強いメッセージを送っている。

 (旬報社 1600円+税)

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