「食べたくなる本」三浦哲哉著

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 20代前半、10カ月のフランス滞在から帰国した著者は、空港に降り立った時、日本の街は醤油と魚の匂いに包まれていると改めて気づいた。真夏の正午に出迎えにきた友人とビールを飲み、日本のビールを味わい直したような強烈な感動を覚えた。汗ばみながら飲む一杯のビールのうまさを完全に忘れていたのだ。

 それはヴィム・ヴェンダースの「ベルリン・天使の詩」の一場面と重なった。不老不死だが肉体を持たない天使が、人間の踊り子に恋をして人間になり、一杯のコーヒーを飲んで幸せそうな笑みを浮かべる。著者が成田で飲んだビールは、このコーヒーと同じ「絶対の美味」だったのだ。(元天使のコーヒー)

 映画批評・研究者が「食」を語るエッセー集。

(みすず書房 2700円+税)

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