「中野のお父さんは謎を解くか」北村薫著
主人公は、小説文宝の編集者・田川美希。ある日、作家と挿絵画家の関係を調べていて、グレゴリ青山の「マダムGの館 月光浴篇」というコミックエッセーの中で「やって来たのはガスコン兵」という謎の一節に出合う。どうやら太宰治の短編「春の盗賊」にある言葉なのだが、唐突に出てくるその言葉の意味がわからない。
図書館で調べても何もわからなかった美希が最後に頼ったのは、定年間際の国語教師である父親。いったいガスコン兵とは何者なのか。疑問をぶつける美希に対して、父はその謎をするすると解いてみせるのだが……。(「ガスコン兵はどこから来たか」)
本書は、出版部勤めの娘が持ち帰った文学に関する謎を、中野区在住の文学マニアの父が解き明かすほのぼの文学系のミステリー集。
前作「中野のお父さん」の続編で、今回は松本清張を打ちのめした評論家の怒りの理由、泉鏡花が徳田秋声を殴った本当のわけ、ベストセラー「100万回生きたねこ」の別の顔など、文学ファンをうならせるネタ満載の8つの謎が提示される。
出典元の本も読み返したくなってくる本好き必見の書。
(文藝春秋 1550円+税)