「金剛の塔」木下昌輝著

公開日: 更新日:

 聖徳太子が593年に創建した四天王寺は、最古の仏教寺院として有名だが、中でも威容を誇っているのが五重塔だ。しかし創建から250年ほど後に落雷に遭い、以後火事や兵乱により焼失し、7回も再建され、現在あるのは8代目。ただし、その間に遭遇した地震で塔が倒壊することはなかった。そこには独自の技術が施され、1400年間伝承されてきた。本書は、百済から渡ってきた宮大工の金剛一族の末裔を主人公に据えて、その技術がいかに伝承されていったのかを描いたもの。

 序章の舞台は現代。大手ハウスメーカーの設計士・高木悠はある夜、妙な夢を見る。幼い自分が四天王寺の境内で金剛一族の血を引く魂剛組の職人と話している。仕事に行き詰まった悠は翌朝、辞表を出して四天王寺に向かう……。

 続く1章は戦国時代へと移り、以後、平安時代、江戸後期、平安後期、江戸初期、創建時……といくつもの時空を超えていく。現代の丸の内ビルディングの耐震構造やスカイツリーにも応用されている五重塔の建築技術の秘密に迫った技能時代小説。

(徳間書店 1700円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    菊川怜の元夫は会社が業績悪化、株価低迷で離婚とダブルで手痛い状況に…資産は400億円もない?

  2. 2

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  3. 3

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  4. 4

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  5. 5

    斎藤元彦知事ヤバい体質また露呈! SNS戦略めぐる公選法違反「釈明の墓穴」…PR会社タダ働きでも消えない買収疑惑

  1. 6

    渡辺裕之さんにふりかかった「老年性うつ」の正体…死因への影響が報じられる

  2. 7

    水卜ちゃんも神田愛花も、小室瑛莉子も…情報番組MC女子アナ次々ダウンの複雑事情

  3. 8

    《小久保、阿部は納得できるのか》DeNA三浦監督の初受賞で球界最高栄誉「正力賞」に疑問噴出

  4. 9

    菊川怜は資産400億円経営者と7年で離婚…女優が成功者の「トロフィーワイフ」を演じきれない理由 夫婦問題評論家が解説

  5. 10

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”