「日航123便墜落 圧力隔壁説をくつがえす」 青山透子著/河出書房新社

公開日: 更新日:

 日本航空123便が御巣鷹の尾根に墜落してから35年が経つ。著者の青山透子氏は、元日本航空の客室乗務員で、墜落で同僚を失ったことがきっかけで、墜落の詳細を調べるようになった。

 そこで、政府が発表した事故原因に疑問を抱くようになり、ある意味で人生をかけて、真実の追求をしてきたのだ。著者は、これまで数冊の著作を発表してきているが、本書のメインテーマは、「圧力隔壁説」だ。

 事故調査委員会の報告書では、ボーイング社の修理ミスで飛行中に機体後部の圧力隔壁が破断し、客室内部の空気がそこから一気に噴出して、その圧力で尾翼が吹き飛ばされたというストーリーになっている。

 著者は、事故調査委員会報告書の別冊に重要なデータを発見する。それは、フライトレコーダーの記録に基づいて計算すると、尾翼が破壊されたのは、尾翼の一点に異常外力が加わったことであり、その圧力や着力点までが推定されていたのだ。私は、事故調査委員会報告書に別冊が存在していたことさえ知らなかったが、この記述は、政府の報告書に書かれていることなので重要だ。ところが、政府は圧力隔壁破断説を譲らない。著者は、尾翼を破壊するほどの空気が尾翼に向かって流れたのなら、なぜ機体後部に座っていた乗客が無傷でいられたのかと批判する。著者の見立ては、当時開発中だった自衛隊の非炸薬の国産ミサイルが、誤って尾翼を直撃したのではないかというものだ。この見立ては、以前の著書でも主張されていたが、本書では、より明確に書かれている。積み重ねてきた証言や証拠によって、確信を深めてきたからだろう。

 ただ、政府は真実の追求に後ろ向きだ。著者がいくら情報公開請求をしても、さまざまな理屈を並べて非公開とし、なおかついまなお調査中だとして国立公文書館に移管しようともしない。そして、政治家やメディアまでが、この戦後史をひっくり返すほどの疑獄を全く取り上げないのだ。

 私はこの本を多くの人に読んで欲しいと心から思っている。多くの国民が、「圧力隔壁説はおかしい」と思えば、政治家もメディアも、その意見を無視できなくなるからだ。

★★★(選者・森永卓郎)

【連載】週末オススメ本ミシュラン

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議

  2. 2

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 3

    吉川ひなのだけじゃない! カネ、洗脳…芸能界“毒親”伝説

  4. 4

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  5. 5

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    木村拓哉"失言3連発"で「地上波から消滅」危機…スポンサーがヒヤヒヤする危なっかしい言動

  3. 8

    Rソックス3A上沢直之に巨人が食いつく…本人はメジャー挑戦続行を明言せず

  4. 9

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 10

    立花孝志氏『家から出てこいよ』演説にソックリと指摘…大阪市長時代の橋下徹氏「TM演説」の中身と顛末